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ゆたかな丘 News & Events

問題状況のパターンをもつ

 囲碁や将棋で初心者と熟達者は何が違うのかが認知心理学で研究されてきました。その結果、熟達者は「問題状況のパターン」をもっていることが明らかにされました。

 
 その結果明らかにされたのは、まず、熟達者はじつに豊富な「問題状況のパター
 ン」をもっているということだ。たとえば囲碁のある局面を見て、有段者はやすや
 すとそれを覚えて再現できる。しかし、碁石をまったくデタラメに並べた盤面の記
 憶では初心者とあまり変わらなくなってしまうという。つまり、記憶力そのものが
 優れているというより、よくあるパターンを長期記憶として蓄えていて、それを
 使って覚えているのである。また、それぞれのパターンに応じて、どのように打て
 ばいいのかという定石を豊富にもっていることはいうまでもない。p.115『勉強
 法が変わる本ー心理学からのアドバイスー』市川伸一著(岩波ジュニア新書)

 
 この例は囲碁の例ですが、例えば、数学でも同じです。数学の応用問題が解ける人は「問題状況のパターン」をもっている人です。数学の問題の解き方のパターンを覚えていて、使うことができる人が応用問題に対処できる人となります。応用問題の類型化が「抽象化」です。「この問題はあのパターンだな」と考えられることで、トップダウンの情報処理をすることができます。
 難しかった応用問題の対処について光明が差す思いです。
                           校長 見目 宗弘

抽象化する方法

 『勉強の結果は「机に向かう前」に決まる』池田潤著(サンマーク出版)には抽象化する方法が次のように出ています。

 
 では、どうすれば「抽象化」することができるのか。2つの方法があります。一つ
 目は、「なぜ、そうなるのか?」に着目することです。(中略)とにかく問題に向
 かう度に「なぜ?」とつっこみを入れてください。問題を間違えた。なぜ?Aでは
 なく、Bが答えだった。なぜ?書かなければならないことを書けなかった。なぜ?
 場合分けをした。なぜ?とことん、「なぜ」を突き詰めていく。すると、自然に抽
 象化がなされていきます。(中略)もう一つ、「抽象化」してあらゆる問題に対応
 するための方法を紹介します。それは、「同じ問題は二度と出ない」というマイン
 ドセット(考え方)で勉強するということです。(中略)同じ問題が出ると思って
 勉強すると、「記憶量」は増えるかも知れません。しかし、そういう意識で勉強す
 ればするほど、思考することを忘れていきます。思考することを忘れて勉強をして
 いくと、初見の問題や、自分で考えさせられるような問題は解けない頭になってし
 まうのです。(中略)逆に「同じ問題は二度と出ない」と思って勉強をするとどう
 なるか。自然にそこから原理原則を学ぼうとします。pp.62-66

 
 抽象化する方法は、解法を見て、「なぜ」と考え、他に応用できる原理原則を導き出すことです。これができるとトップダウンの情報処理ができ、応用問題が解けるようになります。理屈はこうですが、まだ、なんとなくしかわからないので、次回は囲碁や将棋の例を見て考えていきます。          校長 見目 宗弘

応用問題が解けない理由

 応用問題が解けないという悩みは多くの学生に共通する悩みです。応用問題が解けないことに対して、どのように対処すればよいのでしょうか。
 次の文章を読むと、「法則的知識」「抽象化」というものが鍵となることがわかります。

・応用というのは、「知識が、与えられたり生成されたりしたところを越えて、適用さ
 れ得ること」と定義していいかと思います。エピソードのような個別的知識で項目間
 の隙間を埋めても、それで他の対象に応用できるようになるわけではありません。け
 れども、法則的知識で理解していると、他の対象への応用が容易です。p.94
  『間違いだらけの学習論』西林克彦著(新曜社)
・私自身、成績が上がらずにいたときの大きな悩みが、「同じ問題しか解けない」とい
 うものでした。(中略)何が問題なのか。どう改善すればいいのか。考え続けた結
 果、ある答えが見つかりました。それは、「抽象化」という方法です。私が出した結
 論は、「今目の前にある問題が解けることが大事なのではなく、今目の前にある問題
 から、他の問題にも通用する原理原則を学ぶことが重要なのだ」ということでした。
 つまり、一つの問題から、他の問題にも応用できることを見つけ出せ、ということ。
 一つの具体的な問題を見るのではなく、そこから抽象的な原理原則に目を向ける。
 pp.60-62『勉強の結果は「机に向かう前」に決まる』池田潤著(サンマーク
 出版)
 
 どちらも個々の問題を離れて他に使えるものを導き出すということが共通しています。応用問題が解けない理由は個々の理解にとどまっているためです。
 では、抽象化するにはどうしたら良いのでしょうか。
                           校長 見目 宗弘

目的に応じた暗記

 テストの形式によって暗記の仕方が違ってきます。テストの形式とは、暗記したことをそのまま書くテストと暗記したものを材料として書くテストとの違いです。「再認」と「再生」という違いです。
 
 問題の正誤を判断する「再認」が必要な択一試験に対して、「再生」が求められる記
 述・論述式試験は、目標とする記述レベルも当然違ってきます。  「記憶法67高速で
 ページめくる」『読売新聞』2012年(平成24年)9月8日(土)
 
 求められるものが違うので暗記方法も違います。その方法を伊沢拓司さんは、「ミクロ記憶」「マクロ記憶」と呼び分けています。「再認」のための暗記が「ミクロ暗記」、「再生」のための暗記が「マクロ暗記」と呼んでいます。
 伊沢さんが言う「ミクロ暗記」とは次のものです。

・「ミクロ暗記」が必要なモノは、細部まで覚える必要があるものです。漢字の書き取
 り、英単語の綴り、社会の用語、数学の公式などなど。ここの挙げたものはどれも
 「テキストに書いてあることをそのとおりに再現することに意味があるもの」です。
 英単語も漢字も、細部が違ったら別のものになってしまいます。p.229
・ですから、ミクロ暗記においてまず何より意識すべきは「完璧を目指す」ことです。
 マクロ暗記と異なり、ミクロでは「惜しい」が何の価値も持ちません。正解か不正解
 か、ただそれだけの世界です。まずはこの心がけが大事でしょう。p.230
 『勉強大全』伊沢拓司著(KADOKAWA)
 
 伊沢さんの言う「ミクロ暗記」は完璧をめざす暗記です。
 これに対し大枠を覚える「マクロ暗記」というものがあります。

・マクロという言葉には、「巨大」とか「大きな範囲で見た」という意味があります。
 ゆえにマクロ暗記とは、「大枠を覚えておけばいいもの」に適した暗記法のことで
 す。例えば、数学の証明。(中略)学校や会社で行うプレゼン原稿を覚えるのも、こ
 の暗記タイプに入るでしょうね。p.222
・要するにこれら「マクロ暗記」モノは、どれも「大事な構成要素と、それらのつなが
 り方さえ覚えておけばいい」わけです。p.222
・このような構造ゆえに、マクロ暗記においては「構造」が暗記の対象になります。
 p. 223
・そう、テーマは「再現」です。完全な再現ではありませんが、構造を覚え、試験会場
 で正しく思い出せるような覚え方をしなければなりません。p.223
 
 この「マクロ暗記」には大切なポイントがあります。

・大事になってくるのは、単語など各部にある「ピース」と、それらの「つながり」で
 す。それらの配置や順序がキモになるわけですから、すっ飛ばすことなく少しずつ覚
 えていく必要があります。p.224
・なので、覚えるときのポイントは「少しずつ頭に入れていく」「構造を再現できるよ
 うに反復する」の2つです。p.224
・僕がやっていたのは、まず「ピース」がいくつあっかのかを覚える、という方法でし
 た。p.226
 
 記述式試験にはこの「マクロ暗記」が必要になります。「マクロ暗記」は応用問題を解くための暗記法だと思います。           校長 見目 宗弘

じゃがいも販売について

 7月3日(金)、学校支援ボランティア様の渡辺様、吉原さんのご指導のもと、ステップ学級が育て、収穫したじゃがいもの袋詰め作業を行いました。
 袋に詰めたじゃがいもは、7月6日の月曜日、12:50~体育館アリーナ後方にて、販売します。1袋100円です。収益金は手をつなぐ親の会の収入として秋野菜作りなどに使わせていただきます。おいしそうなじゃがいもです。お得です。ぜひ、ご購入ください。なお、レジ袋はありませんので、マイバッグやエコバッグ等をご持参ください。

絵で覚える実践例

 絵で覚える実践例を紹介します。


・遊び感覚で作った図面が試験のときにパッと浮かぶ 吉村康(仮名)・文科3類1
 年
 イメージ効果を利用して記憶する。
 図を描いてそこにポイントを書き込み、覚えるようにしていたという。
 「例えば、歴史の教科なら、大きめの紙にまず地図を描き、各国それぞれの場所 
 に、同じ時期に起きたことを書き込むようにしていました。すると、ある国の事柄
 が試験に出たとき、この図が浮かぶとともに、ほかの国で起こった事柄も連鎖的に
 思い出すことができる。ビジュアルが伴っていると、その図に関連して頭の中から
 引き出しやすいんですね。文章だけの暗記では、そうはいかないでしょう。」p.
 37『東大生が選んだ勉強法「私だけのやり方」を教えます』東大家庭教師の会著
 (PHP)

 
 右脳の側頭葉を活用した実践例です。    校長 見目 宗弘

海馬をだます(4)知識記憶を印象的にする

 知識記憶を経験記憶にする方法を見てきましたが、知識記憶のまま記憶する方法もあります。それは、語呂合わせや映像化してインパクトを残して覚える方法です。覚えたことを保存しておく側頭葉は右脳と左脳の両方にありますが、右脳の側頭葉を使うのです。右脳は容量が大きいので、記憶が保持されやすくなります。

 
 文字よりも映像の方が覚えやすいのも、脳の特性です。文字情報が左脳で記憶され
 るのに対し、映像情報は右脳で記憶されます。「一説によると、右脳の記憶できる
 容量は、左脳の100万倍。データ量に置き換えれば、1テラ・バイトと1メガ・
 バイトの違いで圧倒的な差です」。 「記憶法89頭の中を『劇場化』」『読売新
 聞』2013年(平成25年)2月23日(土)

 
 この新聞記事では「頭の中に覚えやすい映像を作り、その映像を記憶してしまうのです。」とあり、覚えることを絵などにして右脳で覚える方法が示されています。
 知識記憶は思い出すときに手がかりがなく、思い出しにくいという欠点がありますが、このように絵として覚えていれば、思い出しやすいと思います。 
                         校長 見目 宗弘

海馬をだます(3)場所を変える

 覚える場所を工夫して、経験記憶を定着させるという方法もあります。公園で覚える実践例です。

 
 栗田さんは中学生に、平家物語の冒頭を公園を歩きながら暗記させたことがありま
 す。運動感覚を使って場所記憶をいかし、個々の文章を定着させると、公園を思い
 出すだけで自然と文章を想起できるようになったそうです。 「記憶法22散歩風景と
 結びつけ」『読売新聞』2011年(平成23年)9月9日(金)

 
 引用に出てくる栗田さんとは栗田昌裕さんという大学教授です。栗田先生の方法は覚える場所を変える方法で、「三角記憶法」と命名した記憶法が特徴的です。3カ所で覚える方法です。

 
 例えば、覚えたい知識が書いてある参考書をある日、場所Aで勉強する(第1エピソ 
 ード)。別の日、場所Bでインターネットを使い、ホームページで知識を学び直す
 (第2エピソード)。さらに別の日に、場所Cで知識を友人に語って聞かせる(第3
 エピソード)。「場所・時間・見る角度を変え、意図的に3つの時空体験を作るの
 が三角記憶法。こうすれば根がしっかり張った知識を『エピソード記憶+意味記
 憶』の連合体として形成できるようになるのです」。栗田さんが三角形の図をなぞ
 りながら、解説してくれました。 「記憶法21エピソード3つ作る」『読売新聞』
 2011年(平成23年)9月2日(金)

 
 引用に出てくるエピソート記憶とは学習の時と場所を特定できる記憶です。引用の意味記憶とはいつどこで学習したかを特定できない知識や事象に関する記憶です。場所を変えて覚えることで、記憶が鮮明になり覚えやすくなります。この理論に基づき、家の中でも覚える場所を変えてみると覚えたものを思い出しやすくなると思います。                   
                        校長 見目 宗弘

中学生にあった暗記法

 今まで見てきたように知識記憶より経験記憶の方が記憶に残ります。経験記憶でも、ただ体を使うよりは理解を伴う活動を大切にする必要があります。

 
 高校生になると、丸暗記よりむしろ理論だった経験記憶がよく発達してきます。そ
 れは、ものごとをよく理解してその理屈を覚えるという能力です。当然、勉強方法
 もそうした作戦に変えていく必要があります。丸暗記はいけません。高校生にもな
 れば、もはや丸暗記は効果的な学習法とは言えません。pp.157-158『最
 新脳科学が教える高校生の勉強法』池谷裕二著(ナガセ)

 
 中学生は丸暗記から理解した上での暗記に切り替えるときです。暗記しながら自己説明したり、暗記しててもわからないところを調べたりということが定着を確かなものにします。                    
                           校長 見目 宗弘

海馬をだます(2)体を使う実践例

 体を使う、暗記の事例を紹介します。

 
 五感をフル活用するのが決め手 本橋寛生(仮名)・文科1類1年
 「暗記ものは音読するのが一番」と主張するのが、本橋寛生(仮名)さん。
・「目で読んだだけでは、絶対に覚えられないじゃない。目からだけでなく、耳、口
 を使って頭に入れないと。実際、僕の今までの経験から考えても、繰り返し何度も
 音に出す方が、記憶の定着率は断トツに上がります。」
 と語る本橋さんは、次のようなやり方で音読し、記憶ものをこなしていたという。
 「まず初めは、ざっと音読します。もちろん家で行うのですが、声の大きさはなる
 べく大きめに。普通のしゃべり声ぐらいまでは、出すようにした方がいい。そして
 2回目は、目をつぶって音読。今度は、一度その部分を離れて違うページに行き、
 その後再び先ほどの箇所に戻り、目をつぶってまた音読。目をつぶっていても、口
 からすらすら出てくるようになったら合格ですね。出てこないようなら、何度でも
 繰り返す。暗記に関していうなら、反復することが何より重要ですから。」pp.
 12-13
・「座って読むだけでは、気が滅入っちゃいますから。机の前という固定された状況
 にずっといることに、飽きてしまうんですよ。なので、音読は歩き回っていた。こ
 れなら動きが伴うので、五感をフルに使っている感じがしてよかった。当時は部屋
 の中をグルグル回りながら、暗記していましたね。」p.13『東大生が選んだ勉
 強法「私だけのや り方」を教えます』東大家庭教師の会著(PHP)

 
 本当に体を使っているのがわかる記述です。    校長 見目 宗弘

海馬をだます(2)体を使うのが良い理由

  暗記において、体を使うとなぜ効果的なのでしょうか。理由は、体を使うことで、知識記憶が経験記憶として側頭葉に保存されるからです。少し難しい話になりますが説明します。ここでいう知識記憶、経験記憶とは、次のものです。

 
 自由に思い出せる記憶、つまり自分の過去の経験が絡んだ記憶のことを「経験記
 憶」と呼びます。一方、何らかのきっかけがないとうまく思い出せない知識や情報
 のような記憶のことを「知識記憶」と言います。p.132『最新脳科学が教える
 高校生の勉強法』池谷裕二著(ナガセ)

 
 知識記憶とは人や物の名前などの記憶で、経験記憶とは自分の経験したことの記憶です。知識記憶には次の説明があります。

 
 皆さんはきっと「ど忘れ」をしたことがあるでしょう。「う~ん、何だっけ?ここ
 まで出かかってるんだけどなあ…」などというのは、ほとんどの場合、人や物の
 「名前」であるはずです。これは知識記憶です。先ほどの実験でも分かったよう
 に、知識記憶は自在に思い出すことはできません。思い出すためには、必ずきっか
 けが必要です。きっかけが弱いと思い出せなくて当然です。ど忘れというのは、ボ
 ケの始まりでもなんでもありません。単に、知識記憶だから思い出しにくかっただ
 けのことです。p.132

 
 知識記憶は忘れやすい記憶です。でも、体全体を使うことで、知識記憶が簡単に経験記憶となります。

 
 もっとも手軽な経験記憶の作り方は、覚えたい情報を友達や家族に説明してみるこ
 とです。そうずれば、「あのとき説明したぞ」「こんな図を描きながら教えたとこ
 ろだ」といった具合に経験記憶になります。間違いなく、それがきっかけとなっ
 て、あとで簡単 に思い出すことが出来るようになります。p.142

 
 経験記憶は長い間覚えていられる記憶です。長期の保存となるのです。
 また、別の理由で体を使うと良い理由がもう1つあります。

 
 文字を眺めて、この漢字はこれこれこう書くと覚えているときは、認識性記憶(頭
 の記憶)といって、左脳を使って覚えます。ところが、手で書いて覚えるのは、運
 動性記憶(体の記憶)であって、小脳で覚えるのです。p.211『すごい「勉強
 法」』高島徹治著(三笠書房)

 
 書いて覚えることで小脳が覚えてくれるのです。小脳にも保存の機能があるので、忘れにくくなります。            校長 見目 宗弘

ジャガイモ掘り

 昨日、ステップ学級の生徒が、学校支援ボランティアの皆様の御協力により栽培されていたジャガイモを収穫しました。あいにくの天気でしたが、事前に準備をしてくださったのと、当日もお手伝いいただいたおかげで、短時間のうちに作業を終えることができました。収穫の喜びや、食べ物及びそれを作ってくださる方への感謝など、活動を通じていろいろなことを感じ取れるものと思います。

  

海馬をだます(2)「見る」「聞く」「書く」「話す」をする

 自分がまとめる際、「見る」「聞く」「書く」「話す」という4つの活動を行うと効果的です。

 学習における基本とは、「見る」「聞く」「書く」「話す」という、この4つで
 す。これをおいてほかにはありません。裏を返せば、この4つの行動を十分活用し
 て勉強すると、学習効果は飛躍的に高まります。大切なことは、五感を活用して学
 習すること。そうすれば、脳により強く情報が記憶されるのです。英単語を覚える
 ときに、机に向かって漠然と単語帳を読んでいるだけではあまり頭に入りません
 が、読んだ単語を「書き」、さらにそれを「音読」し、自分の耳で「聞く」こと
 で、単語がより強く記憶されます。学校や塾の授業では「見る」「聞く」という行
 動を主に行います。ここでもやはり、ぼうっと顔を上げているだけでなく、ペンを
 動かして要点をメモしていくことが効果的です。(中略)さらに記憶の定着に効果
 的なのは、「話す」ということです。授業で聞いた内容を人に説明することで、覚
 えた知識が脳にはっきりと刻まれていきます。頭で分かったつもりになっていて
 も、相手が理解できるように説明するには、情報を自分なりに整理しておかねばな
 りません。話しているうちに、自分自身の理解が正確かどうか、はっきりしてきま
 す。話しているうちに内容が整理され、確実な理解として記憶に留まるのです。ま
 た、口で説明するという「経験」を通じて、より強固な記憶にもなります。pp.
 124-126『伸びる子の法則 自ら学ぶ習慣が身につく学習法』森山真有著
 (PHP文庫)

 説明は他人に対してだけではありません。「自己説明」というものもあります。

 
 ところで「説明」というと、誰かが誰かに向かって説明する様子を思い浮かべるこ
 とでしょう。実は心理学ではもう少し間口を広げて、自分に向かって説明する、と
 いうのも説明の1つとして捉えて、「自己説明」などと呼んでいます。例えば、教
 科書を読むときに、読みながら気づいたことや考えたこと、あるいはちょっと頭に
 浮かんだことを、声に出してみるのです。そうすると、単に教科書を読むだけの勉
 強に比べて、学習が深まることが知られています。(中略)自分で勉強するとき
 に、ノートをまとめるというのも、広い意味では「自己説明」の1つと考えてよい
 でしょう。pp.139-140『学習支援のツボ 認知心理学者が教室で考えた
 こと』佐藤浩一著(北大路書房) 
 
 「見る」「聞く」「書く」「話す」等、実際に体をこれだけ使えば、記憶に残ると実感できると思います。 校長 見目 宗弘

海馬をだます(2)自分がかかわり、大切なこととする

 海馬をだますには、大切なことを自分がまとめることです。自分がまとめることによって、「これは必要なこと」と海馬が認識してくれ、長期記憶として保存されます。「生成効果」と言います。


・同じ事柄でも、人から教わるよりも自分で考えたり思いついたときの方が、記憶に
 よく残っているという経験はないでしょうか。このことを心理学では「生成効果」
 と呼ばれています。(中略)自分でノートを整理し直したり、自分の言葉で説明し
 直したりするという勉強方法は、まさに生成効果につながるわけです。pp.24
 -25
・また定期テストが近づくと、先生がまとめプリントを作成してくれることがありま
 す。生成効果の観点で考えると、こうした親切は逆効果です。自分でまとめる、自
 分で説明する、自分で生成する機会を逃すことになってしまうからです。p.26
 『学習支援のツボ 認知心理学者が教室で考えたこと』佐藤浩一著(北大路書房)

 
 人がまとめてしまっては「生成効果」は生まれないのですね。 校長 見目宗弘

繰り返し学習のコツ2 時間をおいて繰り返す

 海馬は情報を選別して、いらないものをどんどん消去するため、私たちは覚えたことをどんどん忘れていきます。海馬の働きはみんな平等です。

 
 しかし、実際にテストをしてみると、単語を忘れる速度は人によって違わないので
 す。p.39『最新脳科学が教える高校生の勉強法』池谷裕二著(ナガセ)
 
 また、海馬には次の共通点もあります。

 
 2回目は忘れにくくなっているのです。(中略)つまり記憶を繰り返すと、あたか
 も記憶力がアップしたかのように見えるのです。p.50
  
 さらにもう1つ共通点があります。

 
 つまり、潜在的な記憶の保存期間は1ヵ月なのです。1ヵ月以内に復習しなけれ
 ば、さすがに潜在的な無意識の記憶も無効になってしまいます。復習はいつやって
 も効果があるというわけではありません。最低でも1ヵ月以内に復習するようにし
 ましょう。p.53

 
 忘れるスピードはみんな同じ。また、2回目は忘れにくくなる。そして、1ヵ月たつと忘れてしまう。これらの共通点を活かして、繰り返し学習をしなくてはなりません。池谷先生が示している理想の復習プランは次のものです。

 
 海馬の性質を考えると、もっとも効果的な復習のプランは、
 学習した翌日に、1回目
 その1週間後に、2回目
 2回目の復習から2週間後に、3回目
 3回目のの復習から1ヵ月後に、4回目
 というように、全部で4回の復習を少しずつ間隔をあけながら、2ヵ月かけて行う
 ことです。pp.54-55

 
 このプランは実践に移すには難しいですが、時間をおいて繰り返す暗記が良いことがわかります。        校長 見目 宗弘

繰り返し学習のコツ1 少量を繰り返す

 繰り返し覚えるにもコツがあります。それは少量を繰り返すということです。ポイントは2つあり、一度に覚える量を減らすこととスピードをつけて覚えることです。

 
 一度で正確に記憶して楽をするのではなく、楽にたくさん繰り返して記憶する。宇
 都出雅巳さん(45)が提唱する「1分スピード記憶勉強法」が最も重視している
 のは、この点です。最初のポイントは、一度に覚える量を減らすこと。覚える量が
 少なくなれば、より気軽に取り組め、繰り返しが楽になる。「1分」には、そうし
 た思いが込められているそうです。(中略)楽に繰り返すには、スピードも重要で
 す。最初から細かいところまで覚えようとしてはだめ。ざっくりと大雑把に記憶す
 ることを心がけてください。「粗い記憶の質が、繰り返しにより、はっきりしたも
 のになっていくイメージです」と宇都出さん。たくさんのものを覚えるときは、大
 きな分類から覚えるのが鉄則です。「記憶法58少量を繰り返す」『読売新聞』
 2012年(平成24年)6月16日(土)

 
 少なく覚えるから回数をこなすことができます。また、徐々に細かなところに入っていくので、はっきりと覚えることができます。参考にしたいです。 
                           校長 見目 宗弘

フェイスシールド着用

 昨日の3年生の国語の授業で、以前渡辺産業様よりいただいたフェイスシールドを着用しました。話し合い活動中飛沫が飛び散らないようにとの配慮で使用しましたが、慣れないためか、戸惑いも見られました。今後も、生徒の健康安全のため有効に活用できればと思っています。

 暗記のポイント3 海馬をダマす(1)繰り返し覚える

 海馬の特性を活かす勉強法とは全く反対の勉強法があります。それは海馬に「必要なもの」として仕分けしてもらうために、海馬をダマす方法です。

 
 では、学校で教わる知識を、海馬に「必要なもの」として仕分けしてもらうために
 は、一体どうしたらよいのでしょうか。(中略)その方法はたった一つしかありま
 せん。海馬をダマすしかないのです。p.30『最新脳科学が教える高校生の勉強
 法』池谷裕二著(ナガセ)

 
 ダマす方法は繰り返すことです。池谷先生は言います。

 
 海馬に必要だと認めてもらうには、できるだけ情熱を込めて、ひたすら誠実に何度
 も何度も繰り返し繰り返し、情熱を贈り続けるしかないのです。そうすると海馬
 は、「そんなにしつこくやって来るのだから必要な情報に違いない」と勘違いし
 て、ついに大脳皮質にそれを送り込むのです。古来「学習とは何か」に対して、
 「学習とは繰り返しである」と言われてきたのは、脳科学の立場からもまったくそ
 の通りだと言えます。p.31

 
 今まで、漢字や計算練習など繰り返すことで覚えられたのは、海馬が漢字や計算を「必要なもの」と認めてくれたからです。池谷先生は言います。

 
 つまり成績がよい人とは、忘れても忘れてもめげずに、海馬に繰り返し繰り返し情
 報を送り続けている努力家にほかならないのです。p.31

 
 努力の中身は海馬に認めてもらうということだったのです。 校長 見目 宗弘            

暗記のポイント2 海馬を活かす 寝る前の暗記学習

 海馬は大切な情報を選別するので、覚える量を減らすというのが、前回の方法でした。もう1つ、海馬の特性を活かした暗記方法は寝る前に暗記学習をするということです。これは海馬が寝ている間に情報を整理してくれているという特性を活かした暗記方法です。

 
 『記憶力を強くする』などの著書がある脳研究者の池谷裕二・東大准教授による
 と、脳は眠っている間に、日中経験したことを再生していることが分かっているそ
 うです。睡眠は脳の情報を整え、記憶を強化するために必須な過程で、特に再生し
 ているのは寝る直前の時間帯の情報。そう聞くと、寝る前に勉強した方が効果的な
 気がします。(中略)テスト前の緊張で「寝なければ」と気ばかり焦り、眠れない
 経験をした人もいるでしょう。でも、電気を消し、布団に入って寝るふりをするだ
 けでも、脳内の情報整理には効果があるそうです。「ただし、ラジオを聞いたり、
 本を読んだりしたらだめ。睡眠の効用は期待できません」。池谷准教授は、そう話
 します。「記憶法①眠ってアマタを整理」『読売新聞』2011年(平成23年)
 4月1日(金)

 
 塾講師の安河内哲也先生もこのことを実証するように勉強の体験を示しています。

 
 暗記の方法は様々ありますが、私は受験生のとき、山川出版社の世界史の教科書を
 自分で朗読したテープを作り、それを寝る前に枕元で再生していました。朝起きて
 すぎに、またその部分を確認すると、ちょっとした時間ですが、かなり記憶を定着
 させることができます。p.132『今日から始める「やる気」勉強法』
 
 寝る前を暗記のためにうまく活用している人は多いようです。
 
・寝る前にただ聞くだけで覚える⁉ 藤田智泰(仮名)・文科2類1年
 眠りながら記憶する方法
 英語の勉強において、多くの東大生が口をそろえるのは「英語は英文をそのまま理
 解し、覚えていくべき」ということ。英単語を細々と調べ上げ、英文を文法に沿っ
 て解体して和訳し、1つひとつの単語を記憶して……などというやり方は、NGとい
 うわけだ。実際、英語の長文をスラスラと読み解くには、英文全体を見るだけで意
 味がわかるようになっている必要がある。そのためにも「英文のまま理解し、覚え
 る」ことが重要というわけだ。p.32
・「重要英文は、寝る直前に耳で聞いて覚えていました。眠くなったら、英文リスニ
 ングの用意をし、聞きながら寝るというのを日課にしていた。眠いながらも、毎日
 毎日何度も聞いていれば、自然と頭に入ってくるものですよ」。p.33
・「就寝前に聞く英文は、完全に理解しているものを選んでいました。これなら、新
 たに頭を使う必要がない。既に理解している重要英文20コぐらいを、毎日30分
 かけて聞く。同じ英文を2ヵ月ぐらいかけて、毎日繰り返し耳に入れるわけです。
 すると、英文全体の音の流れが覚えられる。"記憶しなくては"などと意識せず、本当
 にただ聞いているだけという状態でいるのがコツです。まあ、もともと眠いなかで
 リスニングをしてい るのですから、ただ聞いているだけしかできませんけどね
 (笑)」。p.33『東大生が選んだ勉強法「私だけのやり方」を教えます』東大
 家庭教師の会著(PHP)

 
 海馬の働きをうまく利用することで結構覚えられるようです。 校長 見目 宗弘


暗記のポイント1 暗記する量を減らすこと

 海馬が側頭葉に情報を保存することをなかなか認めてくれない性質をふまえると、暗記のポイントは「覚える情報を減らすこと」です。何でも覚えられると過信してしまうと覚えるのに苦労するからです。
 
 4年前から記憶術のセミナーを開く宮口さんは、勉強が苦手な子ほど何でも覚えよう
 とすることに気づきました。「それではマラソンを全速力で走ろうとするようなもの
 で、受験は乗り切れない」。宮口さんは断言した後、思いがけない言葉を口にしまし
 た。「覚え過ぎてはいけないのです」(中略)覚え過ぎないを実践するには参考書を
 吟味し、覚えなくてはいけないものと、覚えなくていいものとに分ける必要がある。
 そのためには、過去の出題問題の研究がかかせない。  「記憶法⑭ 最低限の項目の
 み」『読売新聞』2011年(平成23年)7月8日(金)
 
 引用文には、入試に向けて過去の入試問題を分析し覚えることをしぼりこむとあります。これは校内のテストでも同じです。
 
 椋木さんによると、重要な情報をすぐ忘れてしまう人は、情報の選択を脳の自動処
 理に丸投げしている場合が多い。記憶力を高めるには、意識的に情報の選択を行わな
 ければならず、椋木さんはこの作業を、「脳に記憶フィルターをセットする」と呼ん
 でいます。ポイントは、どうやって記憶するかよりも、どう整理すれば記憶しやすい
 かと発想を転換すること。整理の基本は、いらない情報を捨てること。(中略)「情
 報が必要か不要かを『分ける』ことは『分かる』につながり、『解る』になる」と椋
 木さん。 「記憶法71必要な情報か分別」『読売新聞』2012年(平成24年)
 10月6日(土)
 
 上の引用もこの引用も、海馬が行っている情報の選別を自分自身で行うというところに特徴があります。海馬の特性に即した暗記法です。   校長 見目 宗弘