ゆたかな丘 News & Events
海馬をだます(2)体を使うのが良い理由
暗記において、体を使うとなぜ効果的なのでしょうか。理由は、体を使うことで、知識記憶が経験記憶として側頭葉に保存されるからです。少し難しい話になりますが説明します。ここでいう知識記憶、経験記憶とは、次のものです。
自由に思い出せる記憶、つまり自分の過去の経験が絡んだ記憶のことを「経験記
憶」と呼びます。一方、何らかのきっかけがないとうまく思い出せない知識や情報
のような記憶のことを「知識記憶」と言います。p.132『最新脳科学が教える
高校生の勉強法』池谷裕二著(ナガセ)
知識記憶とは人や物の名前などの記憶で、経験記憶とは自分の経験したことの記憶です。知識記憶には次の説明があります。
皆さんはきっと「ど忘れ」をしたことがあるでしょう。「う~ん、何だっけ?ここ
まで出かかってるんだけどなあ…」などというのは、ほとんどの場合、人や物の
「名前」であるはずです。これは知識記憶です。先ほどの実験でも分かったよう
に、知識記憶は自在に思い出すことはできません。思い出すためには、必ずきっか
けが必要です。きっかけが弱いと思い出せなくて当然です。ど忘れというのは、ボ
ケの始まりでもなんでもありません。単に、知識記憶だから思い出しにくかっただ
けのことです。p.132
知識記憶は忘れやすい記憶です。でも、体全体を使うことで、知識記憶が簡単に経験記憶となります。
もっとも手軽な経験記憶の作り方は、覚えたい情報を友達や家族に説明してみるこ
とです。そうずれば、「あのとき説明したぞ」「こんな図を描きながら教えたとこ
ろだ」といった具合に経験記憶になります。間違いなく、それがきっかけとなっ
て、あとで簡単 に思い出すことが出来るようになります。p.142
経験記憶は長い間覚えていられる記憶です。長期の保存となるのです。
また、別の理由で体を使うと良い理由がもう1つあります。
文字を眺めて、この漢字はこれこれこう書くと覚えているときは、認識性記憶(頭
の記憶)といって、左脳を使って覚えます。ところが、手で書いて覚えるのは、運
動性記憶(体の記憶)であって、小脳で覚えるのです。p.211『すごい「勉強
法」』高島徹治著(三笠書房)
書いて覚えることで小脳が覚えてくれるのです。小脳にも保存の機能があるので、忘れにくくなります。 校長 見目 宗弘
ジャガイモ掘り
海馬をだます(2)「見る」「聞く」「書く」「話す」をする
自分がまとめる際、「見る」「聞く」「書く」「話す」という4つの活動を行うと効果的です。
学習における基本とは、「見る」「聞く」「書く」「話す」という、この4つで
す。これをおいてほかにはありません。裏を返せば、この4つの行動を十分活用し
て勉強すると、学習効果は飛躍的に高まります。大切なことは、五感を活用して学
習すること。そうすれば、脳により強く情報が記憶されるのです。英単語を覚える
ときに、机に向かって漠然と単語帳を読んでいるだけではあまり頭に入りません
が、読んだ単語を「書き」、さらにそれを「音読」し、自分の耳で「聞く」こと
で、単語がより強く記憶されます。学校や塾の授業では「見る」「聞く」という行
動を主に行います。ここでもやはり、ぼうっと顔を上げているだけでなく、ペンを
動かして要点をメモしていくことが効果的です。(中略)さらに記憶の定着に効果
的なのは、「話す」ということです。授業で聞いた内容を人に説明することで、覚
えた知識が脳にはっきりと刻まれていきます。頭で分かったつもりになっていて
も、相手が理解できるように説明するには、情報を自分なりに整理しておかねばな
りません。話しているうちに、自分自身の理解が正確かどうか、はっきりしてきま
す。話しているうちに内容が整理され、確実な理解として記憶に留まるのです。ま
た、口で説明するという「経験」を通じて、より強固な記憶にもなります。pp.
124-126『伸びる子の法則 自ら学ぶ習慣が身につく学習法』森山真有著
(PHP文庫)
説明は他人に対してだけではありません。「自己説明」というものもあります。
ところで「説明」というと、誰かが誰かに向かって説明する様子を思い浮かべるこ
とでしょう。実は心理学ではもう少し間口を広げて、自分に向かって説明する、と
いうのも説明の1つとして捉えて、「自己説明」などと呼んでいます。例えば、教
科書を読むときに、読みながら気づいたことや考えたこと、あるいはちょっと頭に
浮かんだことを、声に出してみるのです。そうすると、単に教科書を読むだけの勉
強に比べて、学習が深まることが知られています。(中略)自分で勉強するとき
に、ノートをまとめるというのも、広い意味では「自己説明」の1つと考えてよい
でしょう。pp.139-140『学習支援のツボ 認知心理学者が教室で考えた
こと』佐藤浩一著(北大路書房)
「見る」「聞く」「書く」「話す」等、実際に体をこれだけ使えば、記憶に残ると実感できると思います。 校長 見目 宗弘
海馬をだます(2)自分がかかわり、大切なこととする
海馬をだますには、大切なことを自分がまとめることです。自分がまとめることによって、「これは必要なこと」と海馬が認識してくれ、長期記憶として保存されます。「生成効果」と言います。
・同じ事柄でも、人から教わるよりも自分で考えたり思いついたときの方が、記憶に
よく残っているという経験はないでしょうか。このことを心理学では「生成効果」
と呼ばれています。(中略)自分でノートを整理し直したり、自分の言葉で説明し
直したりするという勉強方法は、まさに生成効果につながるわけです。pp.24
-25
・また定期テストが近づくと、先生がまとめプリントを作成してくれることがありま
す。生成効果の観点で考えると、こうした親切は逆効果です。自分でまとめる、自
分で説明する、自分で生成する機会を逃すことになってしまうからです。p.26
『学習支援のツボ 認知心理学者が教室で考えたこと』佐藤浩一著(北大路書房)
人がまとめてしまっては「生成効果」は生まれないのですね。 校長 見目宗弘
繰り返し学習のコツ2 時間をおいて繰り返す
海馬は情報を選別して、いらないものをどんどん消去するため、私たちは覚えたことをどんどん忘れていきます。海馬の働きはみんな平等です。
しかし、実際にテストをしてみると、単語を忘れる速度は人によって違わないので
す。p.39『最新脳科学が教える高校生の勉強法』池谷裕二著(ナガセ)
また、海馬には次の共通点もあります。
2回目は忘れにくくなっているのです。(中略)つまり記憶を繰り返すと、あたか
も記憶力がアップしたかのように見えるのです。p.50
さらにもう1つ共通点があります。
つまり、潜在的な記憶の保存期間は1ヵ月なのです。1ヵ月以内に復習しなけれ
ば、さすがに潜在的な無意識の記憶も無効になってしまいます。復習はいつやって
も効果があるというわけではありません。最低でも1ヵ月以内に復習するようにし
ましょう。p.53
忘れるスピードはみんな同じ。また、2回目は忘れにくくなる。そして、1ヵ月たつと忘れてしまう。これらの共通点を活かして、繰り返し学習をしなくてはなりません。池谷先生が示している理想の復習プランは次のものです。
海馬の性質を考えると、もっとも効果的な復習のプランは、
学習した翌日に、1回目
その1週間後に、2回目
2回目の復習から2週間後に、3回目
3回目のの復習から1ヵ月後に、4回目
というように、全部で4回の復習を少しずつ間隔をあけながら、2ヵ月かけて行う
ことです。pp.54-55
このプランは実践に移すには難しいですが、時間をおいて繰り返す暗記が良いことがわかります。 校長 見目 宗弘
繰り返し学習のコツ1 少量を繰り返す
繰り返し覚えるにもコツがあります。それは少量を繰り返すということです。ポイントは2つあり、一度に覚える量を減らすこととスピードをつけて覚えることです。
一度で正確に記憶して楽をするのではなく、楽にたくさん繰り返して記憶する。宇
都出雅巳さん(45)が提唱する「1分スピード記憶勉強法」が最も重視している
のは、この点です。最初のポイントは、一度に覚える量を減らすこと。覚える量が
少なくなれば、より気軽に取り組め、繰り返しが楽になる。「1分」には、そうし
た思いが込められているそうです。(中略)楽に繰り返すには、スピードも重要で
す。最初から細かいところまで覚えようとしてはだめ。ざっくりと大雑把に記憶す
ることを心がけてください。「粗い記憶の質が、繰り返しにより、はっきりしたも
のになっていくイメージです」と宇都出さん。たくさんのものを覚えるときは、大
きな分類から覚えるのが鉄則です。「記憶法58少量を繰り返す」『読売新聞』
2012年(平成24年)6月16日(土)
少なく覚えるから回数をこなすことができます。また、徐々に細かなところに入っていくので、はっきりと覚えることができます。参考にしたいです。
校長 見目 宗弘
フェイスシールド着用
暗記のポイント3 海馬をダマす(1)繰り返し覚える
海馬の特性を活かす勉強法とは全く反対の勉強法があります。それは海馬に「必要なもの」として仕分けしてもらうために、海馬をダマす方法です。
では、学校で教わる知識を、海馬に「必要なもの」として仕分けしてもらうために
は、一体どうしたらよいのでしょうか。(中略)その方法はたった一つしかありま
せん。海馬をダマすしかないのです。p.30『最新脳科学が教える高校生の勉強
法』池谷裕二著(ナガセ)
ダマす方法は繰り返すことです。池谷先生は言います。
海馬に必要だと認めてもらうには、できるだけ情熱を込めて、ひたすら誠実に何度
も何度も繰り返し繰り返し、情熱を贈り続けるしかないのです。そうすると海馬
は、「そんなにしつこくやって来るのだから必要な情報に違いない」と勘違いし
て、ついに大脳皮質にそれを送り込むのです。古来「学習とは何か」に対して、
「学習とは繰り返しである」と言われてきたのは、脳科学の立場からもまったくそ
の通りだと言えます。p.31
今まで、漢字や計算練習など繰り返すことで覚えられたのは、海馬が漢字や計算を「必要なもの」と認めてくれたからです。池谷先生は言います。
つまり成績がよい人とは、忘れても忘れてもめげずに、海馬に繰り返し繰り返し情
報を送り続けている努力家にほかならないのです。p.31
努力の中身は海馬に認めてもらうということだったのです。 校長 見目 宗弘
暗記のポイント2 海馬を活かす 寝る前の暗記学習
海馬は大切な情報を選別するので、覚える量を減らすというのが、前回の方法でした。もう1つ、海馬の特性を活かした暗記方法は寝る前に暗記学習をするということです。これは海馬が寝ている間に情報を整理してくれているという特性を活かした暗記方法です。
『記憶力を強くする』などの著書がある脳研究者の池谷裕二・東大准教授による
と、脳は眠っている間に、日中経験したことを再生していることが分かっているそ
うです。睡眠は脳の情報を整え、記憶を強化するために必須な過程で、特に再生し
ているのは寝る直前の時間帯の情報。そう聞くと、寝る前に勉強した方が効果的な
気がします。(中略)テスト前の緊張で「寝なければ」と気ばかり焦り、眠れない
経験をした人もいるでしょう。でも、電気を消し、布団に入って寝るふりをするだ
けでも、脳内の情報整理には効果があるそうです。「ただし、ラジオを聞いたり、
本を読んだりしたらだめ。睡眠の効用は期待できません」。池谷准教授は、そう話
します。「記憶法①眠ってアマタを整理」『読売新聞』2011年(平成23年)
4月1日(金)
塾講師の安河内哲也先生もこのことを実証するように勉強の体験を示しています。
暗記の方法は様々ありますが、私は受験生のとき、山川出版社の世界史の教科書を
自分で朗読したテープを作り、それを寝る前に枕元で再生していました。朝起きて
すぎに、またその部分を確認すると、ちょっとした時間ですが、かなり記憶を定着
させることができます。p.132『今日から始める「やる気」勉強法』
寝る前を暗記のためにうまく活用している人は多いようです。
・寝る前にただ聞くだけで覚える⁉ 藤田智泰(仮名)・文科2類1年
眠りながら記憶する方法
英語の勉強において、多くの東大生が口をそろえるのは「英語は英文をそのまま理
解し、覚えていくべき」ということ。英単語を細々と調べ上げ、英文を文法に沿っ
て解体して和訳し、1つひとつの単語を記憶して……などというやり方は、NGとい
うわけだ。実際、英語の長文をスラスラと読み解くには、英文全体を見るだけで意
味がわかるようになっている必要がある。そのためにも「英文のまま理解し、覚え
る」ことが重要というわけだ。p.32
・「重要英文は、寝る直前に耳で聞いて覚えていました。眠くなったら、英文リスニ
ングの用意をし、聞きながら寝るというのを日課にしていた。眠いながらも、毎日
毎日何度も聞いていれば、自然と頭に入ってくるものですよ」。p.33
・「就寝前に聞く英文は、完全に理解しているものを選んでいました。これなら、新
たに頭を使う必要がない。既に理解している重要英文20コぐらいを、毎日30分
かけて聞く。同じ英文を2ヵ月ぐらいかけて、毎日繰り返し耳に入れるわけです。
すると、英文全体の音の流れが覚えられる。"記憶しなくては"などと意識せず、本当
にただ聞いているだけという状態でいるのがコツです。まあ、もともと眠いなかで
リスニングをしてい るのですから、ただ聞いているだけしかできませんけどね
(笑)」。p.33『東大生が選んだ勉強法「私だけのやり方」を教えます』東大
家庭教師の会著(PHP)
海馬の働きをうまく利用することで結構覚えられるようです。 校長 見目 宗弘
暗記のポイント1 暗記する量を減らすこと
4年前から記憶術のセミナーを開く宮口さんは、勉強が苦手な子ほど何でも覚えよう
とすることに気づきました。「それではマラソンを全速力で走ろうとするようなもの
で、受験は乗り切れない」。宮口さんは断言した後、思いがけない言葉を口にしまし
た。「覚え過ぎてはいけないのです」(中略)覚え過ぎないを実践するには参考書を
吟味し、覚えなくてはいけないものと、覚えなくていいものとに分ける必要がある。
そのためには、過去の出題問題の研究がかかせない。 「記憶法⑭ 最低限の項目の
み」『読売新聞』2011年(平成23年)7月8日(金)
引用文には、入試に向けて過去の入試問題を分析し覚えることをしぼりこむとあります。これは校内のテストでも同じです。
椋木さんによると、重要な情報をすぐ忘れてしまう人は、情報の選択を脳の自動処
理に丸投げしている場合が多い。記憶力を高めるには、意識的に情報の選択を行わな
ければならず、椋木さんはこの作業を、「脳に記憶フィルターをセットする」と呼ん
でいます。ポイントは、どうやって記憶するかよりも、どう整理すれば記憶しやすい
かと発想を転換すること。整理の基本は、いらない情報を捨てること。(中略)「情
報が必要か不要かを『分ける』ことは『分かる』につながり、『解る』になる」と椋
木さん。 「記憶法71必要な情報か分別」『読売新聞』2012年(平成24年)
10月6日(土)
上の引用もこの引用も、海馬が行っている情報の選別を自分自身で行うというところに特徴があります。海馬の特性に即した暗記法です。 校長 見目 宗弘