ゆたかな丘 News & Events
理解には理解する素地が必要である。
私たちは自分の経験や頭の中に蓄えられた情報をもとに新しいことを理解しています。このことを宇佐美寛という大学の先生は次のように説明しています。
学習者に与えられた情報は、この蓄積構造の中のある部分に組みこまれ他の情報と
関連づけられる。基底の直接経験の層の情報にまで結びつく。これが情報を「解釈
した」ということであり、「解釈内容を得た」ということでもある。p.144
『授業にとって「理論」とは何か』宇佐美寛著(明治図書)
頭の中にすでにある情報の蓄積構造に位置づけられるとき、理解できるのです。だから、頭の中に蓄えられた情報が不足していると、新しいことが理解できなくなります。積み上げの教科である数学と英語にはその傾向が顕著です。そのため、数学や英語では以前学習したところまで遡って学習し直す必要があります。
数学の事例
例えば、中3の「関数y=ax(2)」でつまずいたなら、中2の「一次関数」へ、そ
れでもまだ難しい場合は中1の「変化の対応」までさかのぼります。小学生レベル
の「比例・反比例」まで戻ることにもためらう必要はありません。「理解」に重点
を置いて学習し直すことが、克服につながるからです。 開倫塾 和田英明「数学
パターン習得で向上」『読売新聞』2014年(平成26年)6月27日(金)
英語の事例
中2で入塾したA君は英語が苦手で、成績もなかなか伸びないことが悩みでした。
彼は、中2までに身につけておくべき単語・熟語・基本文型などの基礎知識が抜け
落ちていました。これらの基礎知識は、英語の4つの力(読む・聞く・書く・話
す)を支える英語の柱です。この柱をしっかりと築くことができずにつまずいてし
まったのです。そこで、「音読を徹底的に繰り返す」ことをA君に課しました。
(中略)中3になった今では、苦手だった英語が得意教科となり、偏差値は35か
ら55へと大幅に向上しています。 開倫塾 中谷克信「英語『音読』が効果的」
『読売新聞』2015年(平成27年)10月9日(金)
数学や英語では理解できるところまで戻って、学習し直す必要があります。
校長 見目 宗弘
新聞に出ていた、読むことで理解する事例
ーな話題が比較的短い文章で、「起承転結」の組み立てで書かれているため、とても
読みやすいです。また、見出しがないため、先入観をもたずに読むことができます。
そこで、家族の皆さんや友達と一緒に同じコラムを読んで見出しをつけ、その理由や
内容について意見交換してみましょう。 開倫塾 津久井幸「新聞で考える力をつけ
よう」『読売 新聞』2016年(平成28年)8月14日(日)
社会 教科書の音読
覚える意気込みで声を出して読む音読にはげんでください。 開倫塾 鈴木一昭「分
野別 歴史年表を作ろう」『読売新聞』2016年(平成28年)5月1日(日)
数学 参考書を繰り返し読む
網羅されているもの、もう1つは、基礎・基本の理解に重点を置き、テーマを絞って
詳細に解答や解説をしているものです。参考書は自分のレベルに応じたものを選ばな
ければなりません。苦手克服には、「理解」に重点を置いた後者が適切です。1度読
んでわからなくても、間をおいて、2度、3度と繰り返し読みましょう。そうする
と、少しずつ内容が頭に入ってくるようになります。根気よく、理解しようと努める
ことが重要です。
開倫塾 和田英明「数学 パターン習得で向上」『読売新聞』2014年(平成26
年)6月27日(金)
理科 教科書や参考書の音読
周りの温度変化に伴って体温が変化します。このように、教科書に出てくる語句一つ
ひとつの意味をしっかり理解することがたいせつです。教科書や参考書をよく音読す
ることをお勧めします。 開倫塾 岡部正行「理科 疑問持つこと大切」『読売新
聞』2017年(平成29年)7月17日(月)
英語 教科書の音読→語句調べ→日本語訳→英文に直すこと→○つけ
意味がわからなかった場合はすぐに調べましょう。その後、教科書の本文の日本語訳
が自分でできるかをノートに書き出して確認しましょう。次に、ノートに書いた日本
語を英文に直す作業をしましょう。英文を書き終えたら、教科書の内容と比較して、
間違えた部分を赤ペンで直し、間違えた文章や単語を覚えるまで声に出しながら書く
練習をしましょう。開倫塾 津久井幸「英語 まず教科書音読」『読売新聞』201
7年(平成29年)6月26日(月)
各教科、あくまでも1つの事例ですが、教科書の音読を大切にすることで、かなり理解できることがわかります。 校長 見目 宗弘
教科書を何回も音読すること
持たずに、本を読むのと同じような感じで。特に手で書いたりしなくても、何度も繰
り返し読んでいくだけで、内容が頭の中に入ってくるものですよ」pp.15-16
内田さんは教科書の読み方のコツを説明します。
「全部を丸暗記しようというのではなく、全体の流れをつかみ、出てくる用語が全部
理解できていればよし、という意識でやっていました。難しくてわかりにくかったと
ころは、立ち止まって調べる。そして、日を改めて再開するときには、前回立ち止ま
ったところに少し戻り、そこから読んでいくようにしていました」。p.16
全体の流れをつかむ→用語を理解する→わかりにくいところを調べる→再び、読むという流れです。さらに内田さんの勉強法は速読で読むことに特徴があります。
「時間を短縮するために、なるべく速いスピードで読んでいました。速く読むと、そ
れだけ多くの内容に目を通せますから。それと、テストに向けての訓練、といった意
味合いもある。例えば英文などの場合、実際のテストでは、あまり時間がないなかで
長文を読み解かなくてはならない。そのため、日頃から速く読んで理解できるよ
うに、と頑張っていました」。p.16
速読ができるようになるには何回も繰り返し読むことが必要です。読み込むうちにスピードが上がります。
「初めはゆっくり読み、理解していく。その後、何度も読んでいくと、用語の意味や
人名などが頭の中に入ってくる。すると、回を重ねるごとに、速く読めるようになっ
てきます。最終的には、内容がほぼ頭の中に入っているので、サーッと流して読める
ようになる。何度も読んで完璧に理解すれば、その文章をザッと流し見するだけで、
不思議と目から頭の中へと内容がスムーズに入ってくるような感覚になるんです」。
p.17
内田さんの例は、何回も読むことで理解が進み、内容も覚えてしまったという例です。覚えなくても繰り返し教科書を読むことで、理解が深まることは確かです。読むときに音読が良いのは、音読すると読み飛ばしがなくなり、内容が頭に入ってくるようになるからです。最初はおおまかな理解でよいのです。繰り返す中で細部を理解できるようになります。 校長 見目 宗弘
理解はインプットである
勉強の最初はインプットです。予習であれば教科書の文章を読むこと、授業であれば先生の話を聴くことがそれにあたります。
では、最も基本的な学習とは何でしょうか。それは、文章を読むことです。すべて
はそこから始まると言っても、過言ではありません。まずはリラックスして机に向
かい、落ち着いて本を読む癖をつけることが大切です。(中略)文章を読む、人の
話を聴く、そして文章を書く。これが勉強の基本です。その最初の部分でつまずい
てしまっては、その後の勉強すべてに支障を来してしまいます。pp.82-83
『伸びる子の法則 自ら学ぶ習慣が身につく学習法』森山真有著(PHP文庫)
このインプットが案外おろそかにされている傾向にあります。教科書を丁寧に読む、教科書を繰り返し読むということです。教科書を繰り返し読むことで自力で理解できることが多いのではないでしょうか。
インプットをより効果的にするには、家で予習し、授業で質問するという流れを作ることです。
私は、予習は「した方がいい」という考えです。その理由は2つあります。第一
に、教科書を一通り読む程度の予習であっても、それによって次にどんな勉強をす
るのかわかります。たとえ内容がよくわからなくても、「次はわかりにくそうだ」
という見通しを持つことができます。それだけでも、授業に臨む姿勢が違ってくる
でしょう。第二に、予習して少し内容がわかったとしても、おそらく、わからない
ところもあるはずです。そうすると、「ここは注意して聞こう」といった構えがで
きます。つまり難しいところ に適切にエネルギーを振り向けることができるので
す。p.41
『学習支援のツボ 認知心理学者が教室で考えたこと』佐藤浩一著(北大路書房)
予習の目的は「難しそうなところ」「わからないところ」を明らかにすることです。それらを明らかにした上で、授業に臨むことで聴くべきところに力を集中することができるのです。予習によって「読む→聴く」という2つのインプットができ、インプットが確実になります。授業ではわからないところをどんどん質問して欲しいと思います。 校長 見目 宗弘
理解を知る6つの視点
数学で「何を問われているのかがわからない」と思った問題が、後で先生から解説を聞いてみると実は難しくなく、自力で解けた問題だったという経験が生徒の皆さんにはあったと思います。最初に「何を問われているのかがわからない」と思ってしまったところに、理解というものの性質が色濃く出ています。理解は感情に左右されてしまうものなのです。
理解について詳しく知ることは、勉強の質を高めることにつながります。理解について、以下、次の6つの視点から見ていきます。
1 理解はインプットである。
2 理解には理解する素地が必要である。
3 理解は際限がない。
4 理解は説明の仕方、説明内容、説明者に左右される。
5 アウトプットで理解が確かになる
6 理解の当面のゴールはトップダウンの情報処理である。
校長 見目 宗弘
理解してから覚える
それほど「理解」が大切なのに、「理解」についてはあまり語られていないように思います。「理解」を詳しく理解することが、勉強のつまずきを解消することになると思うので、しばらく考察していきたいと思います。 校長 見目 宗弘
まず最初に、自分を理解する
勉強関係の本を読んでいて意外と記述が少ないのがこの「理解する」ということについてです。理解したことを前提として多くの勉強方法が語られている感じがして、「勉強がわからない」「勉強方法がわからない」という声の大元はここにあるのだなと思います。
さて、理解について深く掘り下げる前に、見落としがちな面を最初に押さえておきます。それは自分自身についての理解です。自分自身についての理解の大切さを述べているのは伊沢拓司さんです。伊沢さんは次のように述べています。伊沢さんの説明の中の「対策」はテストの対策のこと、「相手」は学習内容のことです。
「対策」という言葉を聞くと、どうしても相手のことばかりに意識が行ってしまい
がちです。しかし、戦いの場に立つのは、相手ともうひとり、自分がいます。勝負
の変数は2つあるのです。相手がx、自分がyの2元方程式であり、両方に数字を
入れないと答えは出ません。そもそも対策といった時に相手のことばかりが意識さ
れてしまうのは、「自分のことは自分がよく知っている」という前提があるからだ
と僕は思うんです。しかし、果たしてみなさんは自分のことを理解している、と言
い切れるでしょうか?ぼんやりとは理解しているとは思います。(中略)しかし、
ゲームのプレイヤーデータを見るような客観性で自分を分析し、それに対して対策
を取る、みたいなことができる人は少ないはずです。pp.49-50 『勉強大
全』伊沢拓司著(KADOKAWA)
まず、自分のことを理解していないといくら良い学習計画を立てても誘惑に負けてしまい実行に移せません。学習計画が絵に描いた餅になってしまいます。だから、伊沢さんは自分への対策の必要性を述べます。
自分の弱い面を「知らないふりをして放置する」のではなく、「知った上で、その
正確を前提とした対策を取る」のです。夕飯を食べた後に怠けてしまうようなら、
食後はお風呂タイムにして、食事前や入浴後に勉強するとか。p.51
伊沢さん自身はゲーセンが大好きなので、その前を通らないように対策を立てているということです。
自分を理解するということは勉強法を考える際の出発点です。自分を理解し、計画が実行に移せるような対策を立てて勉強に取り組みたいところです。
校長 見目 宗弘
勉強法を考える順番
前置きが長くなりましたが、いよいよ勉強方法について見ていきます。勉強方法を考える際、「理解」→「定着」→「応用」という順番で詳しく見ていきます。この順番は新聞の次の記事を参考にしたものです。
【理解】
理解とは、「うん、なるほど」とよくわかることです。まず、予習で教科書・テキ
ストを読み、自分の分からないところを明らかにします。授業では、わからなかっ
たところを集中的に聞き、教科書に書かれていないことや、先生が強調しているこ
とをメモに取ります。さらに疑問があれば、先生に必ず質問して、その日のうちに
解決するように努 めてください。
【定着】
授業を受けたその日のうちに、復習として、3大練習(音読・書き取り・計算)や
教科書の例題・基本問題に取り組みます。一度覚えたことも、1日たつと半分以上
を忘れてしまいます。理解した内容を確実に身に着(ママ)けるためには、何より繰り
返すことが大切です。①大事なことが口をついてスラスラ言える②楷書で正確に書
ける③基本的な問題 は見た瞬間に答えが出せる—状態になれば、定着したと言え
ます。
【応用】
応用とは、理解・定着したことを「用いる」こと、つまり得点力を身に着(ママ)ける
ことです。そのために取り組むのが問題練習と間違いノート作りです。教科書や
ワーク、テストで間違えた問題を記録します。このとき、間違いはそのまま残して
おくのがポイントです。解答・解説をよく読み、間違えた理由や注意点を赤ペンで
書き込みます。自分がどの段階でつまずいたのか、何が原因なのかを繰り返さない
ために必要な練習に取り組むことで、得点力を高めることができます。
「受験必勝ゼミナール 新学年 学習のポイント」開倫塾講師 緒方滋泰
『読売新聞』2014年(平成26年)4月4日(金)
この説明を参考にして、これから「理解」「定着」「応用」を深く掘り下げて、勉強方法を考えていきたいと思います。 校長 見目 宗弘
勉強する目的
今から100年以上も前の話になりますが、学校制度ができた頃のイギリスでは「子どもは大切な労働力なのに、どうして子どもを学校に行かせなくてはならないんだ。」と、保護者が学校に殴り込みに行ったという記録が残っています。このような歴史を振り返ると、学校に来て勉強することは、皆さんの大切な権利であるように思います。
自分自身のために、勉強するという権利を行使してほしいと思います。その上で、次のような言葉があることを心のどこかにとどめておいてくれたら、うれしいです。
人はなぜ勉強しなくてはいけないのか。私自身の考えを申しますと、「人や社会の役
にたつための勉強する」が答えです。他者の役に立つために、私たちは生まれてき
た。愛する家族のため、愛する隣人のため、愛する社会のために私たちは生きている
のだと、そう考えています。p.16
『伸びる子の法則 自ら学ぶ習慣が身につく学習法』森山真有著(PHP文庫)
勉強のプロセスも大切にする
集め、自分の苦手形式を繰り返すことで弱点を埋めていったのです。p.47
伊沢さんは分析し、情報を収集し、しぼり込み、知識を獲得しています。知識を獲得するプロセスが課題解決の過程となっています。このような取組であれば、プロセス自体も財産です。このような取組をするから受験勉強も財産となります。
今振り返ると、受験勉強は、その後の僕の人生に役立ったと思います。学歴や勉学の
話ではありません。自分を目標の前に立たせ、攻略法を考え、自己分析で弱点を直視
し、一日一日進んでいく。その過程で、今後の人生での難題への向き合い方を、わず
かばかりでも知ることができた、そんな気がします。p.354
中学生の皆さんの関心はいかに覚えるかということだと思いますが、取り組み自体も大切にしてほしいと思います。「どう理解し覚えるか」「どう活用するか」を考え、工夫を凝らしながら勉強するということです。勉強を通して、課題解決の手続きを身に付けることは人生にとって大きな財産となると思います。 校長 見目 宗弘