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問題状況のパターンをもつ

 囲碁や将棋で初心者と熟達者は何が違うのかが認知心理学で研究されてきました。その結果、熟達者は「問題状況のパターン」をもっていることが明らかにされました。

 
 その結果明らかにされたのは、まず、熟達者はじつに豊富な「問題状況のパター
 ン」をもっているということだ。たとえば囲碁のある局面を見て、有段者はやすや
 すとそれを覚えて再現できる。しかし、碁石をまったくデタラメに並べた盤面の記
 憶では初心者とあまり変わらなくなってしまうという。つまり、記憶力そのものが
 優れているというより、よくあるパターンを長期記憶として蓄えていて、それを
 使って覚えているのである。また、それぞれのパターンに応じて、どのように打て
 ばいいのかという定石を豊富にもっていることはいうまでもない。p.115『勉強
 法が変わる本ー心理学からのアドバイスー』市川伸一著(岩波ジュニア新書)

 
 この例は囲碁の例ですが、例えば、数学でも同じです。数学の応用問題が解ける人は「問題状況のパターン」をもっている人です。数学の問題の解き方のパターンを覚えていて、使うことができる人が応用問題に対処できる人となります。応用問題の類型化が「抽象化」です。「この問題はあのパターンだな」と考えられることで、トップダウンの情報処理をすることができます。
 難しかった応用問題の対処について光明が差す思いです。
                           校長 見目 宗弘

抽象化する方法

 『勉強の結果は「机に向かう前」に決まる』池田潤著(サンマーク出版)には抽象化する方法が次のように出ています。

 
 では、どうすれば「抽象化」することができるのか。2つの方法があります。一つ
 目は、「なぜ、そうなるのか?」に着目することです。(中略)とにかく問題に向
 かう度に「なぜ?」とつっこみを入れてください。問題を間違えた。なぜ?Aでは
 なく、Bが答えだった。なぜ?書かなければならないことを書けなかった。なぜ?
 場合分けをした。なぜ?とことん、「なぜ」を突き詰めていく。すると、自然に抽
 象化がなされていきます。(中略)もう一つ、「抽象化」してあらゆる問題に対応
 するための方法を紹介します。それは、「同じ問題は二度と出ない」というマイン
 ドセット(考え方)で勉強するということです。(中略)同じ問題が出ると思って
 勉強すると、「記憶量」は増えるかも知れません。しかし、そういう意識で勉強す
 ればするほど、思考することを忘れていきます。思考することを忘れて勉強をして
 いくと、初見の問題や、自分で考えさせられるような問題は解けない頭になってし
 まうのです。(中略)逆に「同じ問題は二度と出ない」と思って勉強をするとどう
 なるか。自然にそこから原理原則を学ぼうとします。pp.62-66

 
 抽象化する方法は、解法を見て、「なぜ」と考え、他に応用できる原理原則を導き出すことです。これができるとトップダウンの情報処理ができ、応用問題が解けるようになります。理屈はこうですが、まだ、なんとなくしかわからないので、次回は囲碁や将棋の例を見て考えていきます。          校長 見目 宗弘

応用問題が解けない理由

 応用問題が解けないという悩みは多くの学生に共通する悩みです。応用問題が解けないことに対して、どのように対処すればよいのでしょうか。
 次の文章を読むと、「法則的知識」「抽象化」というものが鍵となることがわかります。

・応用というのは、「知識が、与えられたり生成されたりしたところを越えて、適用さ
 れ得ること」と定義していいかと思います。エピソードのような個別的知識で項目間
 の隙間を埋めても、それで他の対象に応用できるようになるわけではありません。け
 れども、法則的知識で理解していると、他の対象への応用が容易です。p.94
  『間違いだらけの学習論』西林克彦著(新曜社)
・私自身、成績が上がらずにいたときの大きな悩みが、「同じ問題しか解けない」とい
 うものでした。(中略)何が問題なのか。どう改善すればいいのか。考え続けた結
 果、ある答えが見つかりました。それは、「抽象化」という方法です。私が出した結
 論は、「今目の前にある問題が解けることが大事なのではなく、今目の前にある問題
 から、他の問題にも通用する原理原則を学ぶことが重要なのだ」ということでした。
 つまり、一つの問題から、他の問題にも応用できることを見つけ出せ、ということ。
 一つの具体的な問題を見るのではなく、そこから抽象的な原理原則に目を向ける。
 pp.60-62『勉強の結果は「机に向かう前」に決まる』池田潤著(サンマーク
 出版)
 
 どちらも個々の問題を離れて他に使えるものを導き出すということが共通しています。応用問題が解けない理由は個々の理解にとどまっているためです。
 では、抽象化するにはどうしたら良いのでしょうか。
                           校長 見目 宗弘

目的に応じた暗記

 テストの形式によって暗記の仕方が違ってきます。テストの形式とは、暗記したことをそのまま書くテストと暗記したものを材料として書くテストとの違いです。「再認」と「再生」という違いです。
 
 問題の正誤を判断する「再認」が必要な択一試験に対して、「再生」が求められる記
 述・論述式試験は、目標とする記述レベルも当然違ってきます。  「記憶法67高速で
 ページめくる」『読売新聞』2012年(平成24年)9月8日(土)
 
 求められるものが違うので暗記方法も違います。その方法を伊沢拓司さんは、「ミクロ記憶」「マクロ記憶」と呼び分けています。「再認」のための暗記が「ミクロ暗記」、「再生」のための暗記が「マクロ暗記」と呼んでいます。
 伊沢さんが言う「ミクロ暗記」とは次のものです。

・「ミクロ暗記」が必要なモノは、細部まで覚える必要があるものです。漢字の書き取
 り、英単語の綴り、社会の用語、数学の公式などなど。ここの挙げたものはどれも
 「テキストに書いてあることをそのとおりに再現することに意味があるもの」です。
 英単語も漢字も、細部が違ったら別のものになってしまいます。p.229
・ですから、ミクロ暗記においてまず何より意識すべきは「完璧を目指す」ことです。
 マクロ暗記と異なり、ミクロでは「惜しい」が何の価値も持ちません。正解か不正解
 か、ただそれだけの世界です。まずはこの心がけが大事でしょう。p.230
 『勉強大全』伊沢拓司著(KADOKAWA)
 
 伊沢さんの言う「ミクロ暗記」は完璧をめざす暗記です。
 これに対し大枠を覚える「マクロ暗記」というものがあります。

・マクロという言葉には、「巨大」とか「大きな範囲で見た」という意味があります。
 ゆえにマクロ暗記とは、「大枠を覚えておけばいいもの」に適した暗記法のことで
 す。例えば、数学の証明。(中略)学校や会社で行うプレゼン原稿を覚えるのも、こ
 の暗記タイプに入るでしょうね。p.222
・要するにこれら「マクロ暗記」モノは、どれも「大事な構成要素と、それらのつなが
 り方さえ覚えておけばいい」わけです。p.222
・このような構造ゆえに、マクロ暗記においては「構造」が暗記の対象になります。
 p. 223
・そう、テーマは「再現」です。完全な再現ではありませんが、構造を覚え、試験会場
 で正しく思い出せるような覚え方をしなければなりません。p.223
 
 この「マクロ暗記」には大切なポイントがあります。

・大事になってくるのは、単語など各部にある「ピース」と、それらの「つながり」で
 す。それらの配置や順序がキモになるわけですから、すっ飛ばすことなく少しずつ覚
 えていく必要があります。p.224
・なので、覚えるときのポイントは「少しずつ頭に入れていく」「構造を再現できるよ
 うに反復する」の2つです。p.224
・僕がやっていたのは、まず「ピース」がいくつあっかのかを覚える、という方法でし
 た。p.226
 
 記述式試験にはこの「マクロ暗記」が必要になります。「マクロ暗記」は応用問題を解くための暗記法だと思います。           校長 見目 宗弘

じゃがいも販売について

 7月3日(金)、学校支援ボランティア様の渡辺様、吉原さんのご指導のもと、ステップ学級が育て、収穫したじゃがいもの袋詰め作業を行いました。
 袋に詰めたじゃがいもは、7月6日の月曜日、12:50~体育館アリーナ後方にて、販売します。1袋100円です。収益金は手をつなぐ親の会の収入として秋野菜作りなどに使わせていただきます。おいしそうなじゃがいもです。お得です。ぜひ、ご購入ください。なお、レジ袋はありませんので、マイバッグやエコバッグ等をご持参ください。

絵で覚える実践例

 絵で覚える実践例を紹介します。


・遊び感覚で作った図面が試験のときにパッと浮かぶ 吉村康(仮名)・文科3類1
 年
 イメージ効果を利用して記憶する。
 図を描いてそこにポイントを書き込み、覚えるようにしていたという。
 「例えば、歴史の教科なら、大きめの紙にまず地図を描き、各国それぞれの場所 
 に、同じ時期に起きたことを書き込むようにしていました。すると、ある国の事柄
 が試験に出たとき、この図が浮かぶとともに、ほかの国で起こった事柄も連鎖的に
 思い出すことができる。ビジュアルが伴っていると、その図に関連して頭の中から
 引き出しやすいんですね。文章だけの暗記では、そうはいかないでしょう。」p.
 37『東大生が選んだ勉強法「私だけのやり方」を教えます』東大家庭教師の会著
 (PHP)

 
 右脳の側頭葉を活用した実践例です。    校長 見目 宗弘

海馬をだます(4)知識記憶を印象的にする

 知識記憶を経験記憶にする方法を見てきましたが、知識記憶のまま記憶する方法もあります。それは、語呂合わせや映像化してインパクトを残して覚える方法です。覚えたことを保存しておく側頭葉は右脳と左脳の両方にありますが、右脳の側頭葉を使うのです。右脳は容量が大きいので、記憶が保持されやすくなります。

 
 文字よりも映像の方が覚えやすいのも、脳の特性です。文字情報が左脳で記憶され
 るのに対し、映像情報は右脳で記憶されます。「一説によると、右脳の記憶できる
 容量は、左脳の100万倍。データ量に置き換えれば、1テラ・バイトと1メガ・
 バイトの違いで圧倒的な差です」。 「記憶法89頭の中を『劇場化』」『読売新
 聞』2013年(平成25年)2月23日(土)

 
 この新聞記事では「頭の中に覚えやすい映像を作り、その映像を記憶してしまうのです。」とあり、覚えることを絵などにして右脳で覚える方法が示されています。
 知識記憶は思い出すときに手がかりがなく、思い出しにくいという欠点がありますが、このように絵として覚えていれば、思い出しやすいと思います。 
                         校長 見目 宗弘

海馬をだます(3)場所を変える

 覚える場所を工夫して、経験記憶を定着させるという方法もあります。公園で覚える実践例です。

 
 栗田さんは中学生に、平家物語の冒頭を公園を歩きながら暗記させたことがありま
 す。運動感覚を使って場所記憶をいかし、個々の文章を定着させると、公園を思い
 出すだけで自然と文章を想起できるようになったそうです。 「記憶法22散歩風景と
 結びつけ」『読売新聞』2011年(平成23年)9月9日(金)

 
 引用に出てくる栗田さんとは栗田昌裕さんという大学教授です。栗田先生の方法は覚える場所を変える方法で、「三角記憶法」と命名した記憶法が特徴的です。3カ所で覚える方法です。

 
 例えば、覚えたい知識が書いてある参考書をある日、場所Aで勉強する(第1エピソ 
 ード)。別の日、場所Bでインターネットを使い、ホームページで知識を学び直す
 (第2エピソード)。さらに別の日に、場所Cで知識を友人に語って聞かせる(第3
 エピソード)。「場所・時間・見る角度を変え、意図的に3つの時空体験を作るの
 が三角記憶法。こうすれば根がしっかり張った知識を『エピソード記憶+意味記
 憶』の連合体として形成できるようになるのです」。栗田さんが三角形の図をなぞ
 りながら、解説してくれました。 「記憶法21エピソード3つ作る」『読売新聞』
 2011年(平成23年)9月2日(金)

 
 引用に出てくるエピソート記憶とは学習の時と場所を特定できる記憶です。引用の意味記憶とはいつどこで学習したかを特定できない知識や事象に関する記憶です。場所を変えて覚えることで、記憶が鮮明になり覚えやすくなります。この理論に基づき、家の中でも覚える場所を変えてみると覚えたものを思い出しやすくなると思います。                   
                        校長 見目 宗弘

中学生にあった暗記法

 今まで見てきたように知識記憶より経験記憶の方が記憶に残ります。経験記憶でも、ただ体を使うよりは理解を伴う活動を大切にする必要があります。

 
 高校生になると、丸暗記よりむしろ理論だった経験記憶がよく発達してきます。そ
 れは、ものごとをよく理解してその理屈を覚えるという能力です。当然、勉強方法
 もそうした作戦に変えていく必要があります。丸暗記はいけません。高校生にもな
 れば、もはや丸暗記は効果的な学習法とは言えません。pp.157-158『最
 新脳科学が教える高校生の勉強法』池谷裕二著(ナガセ)

 
 中学生は丸暗記から理解した上での暗記に切り替えるときです。暗記しながら自己説明したり、暗記しててもわからないところを調べたりということが定着を確かなものにします。                    
                           校長 見目 宗弘

海馬をだます(2)体を使う実践例

 体を使う、暗記の事例を紹介します。

 
 五感をフル活用するのが決め手 本橋寛生(仮名)・文科1類1年
 「暗記ものは音読するのが一番」と主張するのが、本橋寛生(仮名)さん。
・「目で読んだだけでは、絶対に覚えられないじゃない。目からだけでなく、耳、口
 を使って頭に入れないと。実際、僕の今までの経験から考えても、繰り返し何度も
 音に出す方が、記憶の定着率は断トツに上がります。」
 と語る本橋さんは、次のようなやり方で音読し、記憶ものをこなしていたという。
 「まず初めは、ざっと音読します。もちろん家で行うのですが、声の大きさはなる
 べく大きめに。普通のしゃべり声ぐらいまでは、出すようにした方がいい。そして
 2回目は、目をつぶって音読。今度は、一度その部分を離れて違うページに行き、
 その後再び先ほどの箇所に戻り、目をつぶってまた音読。目をつぶっていても、口
 からすらすら出てくるようになったら合格ですね。出てこないようなら、何度でも
 繰り返す。暗記に関していうなら、反復することが何より重要ですから。」pp.
 12-13
・「座って読むだけでは、気が滅入っちゃいますから。机の前という固定された状況
 にずっといることに、飽きてしまうんですよ。なので、音読は歩き回っていた。こ
 れなら動きが伴うので、五感をフルに使っている感じがしてよかった。当時は部屋
 の中をグルグル回りながら、暗記していましたね。」p.13『東大生が選んだ勉
 強法「私だけのや り方」を教えます』東大家庭教師の会著(PHP)

 
 本当に体を使っているのがわかる記述です。    校長 見目 宗弘