理解には際限がない
勉強方法を考えるときに「理解」→「定着」→「応用」という流れで考えていくと書きましたが、理解には際限がありません。
例えば、皆さんが見知らぬ街の指定された目的地に行かねばならないとします。教えてもらった道順どおりに行くと目的地にたどり着けます。ひとまず「道順がわかった」と言えます。それでも、一本違う道に入り込んだとたんに道に迷ってしまいます。このようなとき、迷いながらもうろうろしながら街の様子がわかってきます。歩き回ったことで、目的地までの新しいルートがわかってきます。そのとき「新しい道順がわかった」ことになります。このように理解には際限がありません。同じことが勉強でも言えます。
自分では既有知識を駆使し、制約条件のすべてを充足する、一応もっともらしい完
全な説明をうみ出すことができた、その意味でよくわかった、と思っても、既有知
識を異にする別の人にとっては必ずしもそうではない。それが相手への質問や批判
となって出てくることになり、これに答えようとすると、今までの説明(理解)で
は不十分で、さらにもっとわからなければならない部分があることにお互い気づ
く。そこでさらにまた考え続けることになる。(中略)こうして「わかっている状
態」から「わからない状態」へ、さらに再び「わかっている状態」へのいう具合
に、二つの状態をくり返しながら、次第により深く理解が進んでいくのである。
p.129 『人はいかに学ぶか 日常的認知の世界』稲垣佳世子・波多野誼余夫
著(中央新書)
「わかっている状態」というのは一安心している状態で、別の角度からものを見ると「わからない状態」になってしまうのです。「わからない状態」を解消しようとしてさらに理解すると次の段階の「わかっている状態」になります。理解には時間がかかります。
いいかえれば、理解をともなう学習には時間がかかるのである。時間に追われ、多
くのことを速やかに処理しなければならない場合には、とても深い理解など達成で
きない。p.63 『人はいかに学ぶか 日常的認知の世界』稲垣佳世子・波多野
誼余夫著(中央新書)
勉強方法において、「理解」→「定着」→「応用」という大まかな流れはありますが、「定着」においても「応用」においても、理解はかかわっています。「定着」と「応用」を早く行いたいという気持ちがあるでしょうが、「理解」に時間をかけ大切にしてほしいと思います。 校長 見目 宗弘